甲斐 舞子 さん
- 福島地区
- 神奈川県鎌倉市 → イギリス → 神奈川県葉山町 → 串間市

水のように生きていく
都井岬の大自然の中、突如として現れるお洒落なキッチンカー。
キッチンカーの中でクレープを焼いている甲斐舞子さんは、
鎌倉育ちで東京のアパレル会社でグラフィックデザイナーとして働いていました。
都会的な感覚を持ちあわせながら串間で暮らし続ける心持ちを教えていただきました。
好奇心の源
【様々な選択 ‐ 移住まで - 】
甲斐さん
「高校までは鎌倉で育ちました。
3歳の時にバレエに出逢い、気がついたら勉強もせずに週5日のレッスン三昧。
夢中になり過ぎて中学の時に『バレエか学校、どちらかを選んでください』と言われ自分の将来を見据え、躊躇なく『学校』を選びました。
高校卒業後はスポーツトレーナーかスポーツ科学の大学教授になりたいと思ってイギリスに留学しました。
スポーツ科学の大学に入学したのですが、なぜかイギリスの芸術文化に刺激され宝石学とジュエリーデザインを学び、2000年に帰国しました。
帰国後は逗子・葉山を拠点に東京のアパレル会社にグラフィックデザイナーとして入社しました。
入社を決めたのは、楽しそうにデザインの仕事をする父の姿をずっと見てきたので、父と同じ会社で仕事がしたいと思っていたからです。
小さな頃に「わくわくするコトやモノを生み出す創造力」を学べたコトが私の原点で、移住後もわくわくに導かれて動き続けています。
入社後は朝8時に家を出て終電で帰ってくる日々でしたが、楽し過ぎて仕事中毒になっていました。
満員電車だけはストレスでしたが。。。」
東京で過ごした時間も今の串間の時間も、どちらも好きだという甲斐さん。
生活の大きな違いは通勤ストレスが全くないこと !! だそう。
【大きな決断 - 移住 - 】
Q1.学校、デザイン、アパレルと躊躇なく選択をしてきたようにお見受けしますが、移住はどんな風に決められたんですか?
甲斐さん
「移住はこれまでになく大きな決断でした。
夫が農家になることを目指したことがきっかけで、2020年に串間市へ移住しました。
夫とは東京のアパレル会社で出逢いました。
当時の夫は時間に追われるように服を作っていました。
職人肌の夫には自分の時間で働くことができる農業の方が、クリエイティブを発揮できると思い移住を決断したんです。
これまでの話だと宮崎にはなんのゆかりもなさそうですが、夫は宮崎市出身で、祖父は宮崎の美郷町出身、祖母は博多出身なので、鎌倉にいながらも九州独特の甘いお醤油には馴染みがありました。なので関東の方がよく言う醤油のカルチャーショックはありませんでした。
宮崎県は何度か訪れていて好きな場所でしたが、中でもなぜ串間を選んだかというと、新婚旅行で立ち寄った市木の幸島がとてもきれいで、波も良くて、サーファーの夫が虜になってしまったからです。」
【移住後の流れ】
甲斐さん
「移住後は東京での生活からは一変しました。
まず串間市の地域おこし協力隊として市役所に通う日々が始まりました。
農業と食のPR活動が主な業務で、前職を生かして様々な農業販促物をデザインしましたよ。(2022年12月任期満了)
市役所の中にいることで最初に串間の地域性や人柄や流れている雰囲気などを感じとれたことは大きかったです。
移住して一番困ったことは言葉の壁 。まったく言葉がわからなすぎ!! 特に電話!!
様々な方とのコミュニケーンをとる中で方言に馴染んでいきました。
2020年から2021年まではコロナ過ということもあり、農業と食の知識を深める学びの年になりました。
地域おこし協力隊業務と並行して様々な資格を習得しました。食の6次産業化プロデューサー、JGAP指導員、オーガニック料理教室、ワクワクワーク の認定講師、食品衛生責任者 などなど。
夫の農業や今後の仕事に活かしていきたいと思ったからです。」
そして地域おこし協力隊任期満了後に、意図せず、それでも自然な流れで都井岬でクレープを焼くこととなるのです。

甲斐さん
「地域おこし協力隊で串間の食に関わっている時に美味しい農産物がたくさんあることを知りました。しかも意外と知られていない。隠れた美味しさをもっとたくさんの人に知って欲しいと思いました。
クレープは果物も野菜も使えるし、おやつにも食事にもなる。生地には串間で力を入れている米粉も使えます。
都井岬を選んだのは串間で一番人が来るところですから。」
お洒落で機能的なキッチンカーは都井岬に馴染むようにとアースカラーで構成されている。木の窓枠がある唯一無二なデザインを請負ってくれたのはたった一件、千葉にあるメーカーだった。
自然に馴染んでいるせいか、岬馬も店の前に並ぶことがあるそうで、
取材当日は平日の昼過ぎにも関わらず、お客さんが後を絶たず、リピーターも多いクレープ屋さんです。
Q3.突然の飲食店ですが、経験はあったんですか?
甲斐さん
「いえ、ありません。料理もあまりしたことはありませんでした。たまに作ると美味しいって言われることは多かったので。」
と、応える甲斐さんの軽やかさから『できるかできないか』よりも『やりたいかやりたくないか』を自然に軸にしていることが伝わってきました。
Q4.今後、事業を広げていく予定はありますか?
甲斐さん
「全然ないです、広げません(笑)働きたいときに働ける、ベストバランスが現状なので。
何より結構忙しいんですよ。一人で仕入れから仕込みまでしてるし、クラシックバレエも習ってるし、食育改善推進委員の仕事とか色々やりたいことやってるので。
田舎にいるとスローライフで時間に余裕があるように思われるけど全然スローライフじゃないです。
でも心の余裕はあります。それがここにいる醍醐味じゃないでしょうか。

地域おこし協力隊での仕事も、串間で家が決まったときもそうなんですが、期待して前に進もうとするよりも、焦らずに信頼を積み上げていくと自然に動き、廻り始めることが多いと感じました。
串間の気質なのかもしれませんが、移住するってそういうことなんじゃないかって思います。
合ってる場所はそれぞれだと思いますが、期待し過ぎず、考えすぎず、移りたいと思ったときがチャンス。の感覚を信じて飛び込んでみてはどうでしょうか?
"くしま" の生活はスローではなくやることがいっぱいあるけど、その不便さを楽しんだり、面白がったりできる人が向いてるんじゃないかと思います。

その都度、さらさらと自分に正直な選択をしてきた甲斐さん。
移住ストーリーを伺って、大きな決断ほどシンプルに考えるといいのではないか。
と思いました。
甲斐さんのモットーは「水のように生きていきたい」。
納得です。
botanical galette (ボタニカルガレット)
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