インタビュー

野村 美夏(のむら みか) さん

  • 市木地区
  • 埼玉→鹿児島→東京→愛知→鹿児島→串間

自然にも周囲の人々にも恵まれて
市木って本当に素晴らしい

光輝く海の景色に包まれ
間近に幸島を眺めながら
リラクゼーションが受けられる 『アメハレテ』。
セラピストの野村美夏さんは、
小学生の息子さんを育てる
シングルマザーでもあります。
串間で起業するまでの経緯や、
子育ての環境についてなど、
オープンに話していただきました。

  

-移住までの道のり-
鹿児島の古民家で
自給自足の宿をしていた

21歳で世界一周のピースボートに乗る経験をした美夏さん。それがきっかけで、戦争や環境、貧富の差など、世界が抱える大きな問題について考えるようになったそうです。

「自分が何をするのが、世界の問題を解決することになるのか?」の答えを探しながら、台湾で地域おこしをしたり、フィリピンで植樹をしたりと、20代は海外でのボランティア活動に携わる日々を送ります。タイのオーガニックファームを訪れたのは、27歳の時でした。

美夏さん
「これだ! と思いました。経済から自由になって自給自足の生活を送ること、その国の伝統的な暮らしを大切に受け継ぐこと、それを人に伝えていくことが、さまざまな問題の解決策になると思ったんです」

こうと決めたら、すぐに行動するのが美夏さん。お付き合いしていたパートナーと28歳で結婚すると、彼の祖父母の故郷にあった古民家に夫婦で移住します。鹿児島県の南さつま市でした。

移住して1ヶ月後には、宿を開業しました。電気は明かりのみで最小限に、ガスも引かない暮らし。かまどで炊事をして、薪で五右衛門風呂を炊いて、エアコンももちろんなし。畑で育てた野菜を料理してお客さんに提供する、昔ながらの日本の暮らしが体験できる宿でした。

美夏さん
「海外からのお客さんが多く、日本の文化や食事を体験できる宿はとても喜んでもらえました。この生活が世界を変えると信じていたし、私も楽しくて天職だと思っていました」

しかし、妊娠と出産を経て子育てをする中で、旦那さんとの価値観や生活スタイルの違いが徐々に問題になっていきます。美夏さんのしたいことと、旦那さんのしたいことが重ならないことが、2人の間の超えられない壁となりました。



-移住のきっかけ-
いつだって新しい道は
目の前にある

宿を続けて5年目。旦那さんとの関係や毎日の暮らしに限界を感じた美夏さんは、ふと思い立って友人が住んでいた串間市の市木を訪れます。そして、幸島の前のビーチで1人静かな時間を過ごしているうちに、本当の思いに気がついたそうです。

「1人になって子どもと暮らすことを考えたら、わくわくする」

幸島の前で、心は決まりました。その後は、友人の縁で市木の家を紹介してもらい、離婚。子どもの親権について元の旦那さんと1年ほど話し合いをする大変な期間を経て、新生活がはじまりました。美夏さんは33歳、息子さんは5歳になっていました。

市木に引っ越しをした時の貯金はゼロ。まさにゼロからの再スタートです。まずは老人ホームの厨房で1年半働いて生活を安定させ、その後はボディケアとアロマセラピーの職業訓練校に約半年間通いました。そして、串間市からの起業支援助成金を受けて、37歳の時に『アメハレテ』の屋号で新月杉サロンカーをオープン!

新月杉とは、新月の日に合わせて伐採して、山で自然乾燥させた杉のこと。この杉材を使って内装の壁を貼ったサロンカーは、まるでリビングでくつろいでいるような居心地のいい空間に仕上がりました。

38歳の時には、施術の幅を広げたいとシンギング・ボウルを学びにネパールへ旅立ちました。なんと小学生の息子さんを連れての2人旅です。旅の成果はたくさんあって、ネパール雑貨やオリジナル精油の販売の仕事につながり、親子の絆も育まれました。

※シンギング・ボウル…ネパールやチベットで古くから演奏される金属製の楽器。リラクゼーション・ツールとして広く利用されています

美夏さん
「世界をよくするために何かをしたいという気持ちは、変わっていないんです。私のセラピーを通して、一人ひとりが本来の自分に還っていけたら、少しずつ世界は変わると思っています」


今では、元の旦那さんとの関係も良好になり、息子さんがお父さんのところで過ごすこともあるそうです。

-2年前のネパール親子旅-



-移住後の生活-
コミュニティの中で
協力しあっての子育て


美夏さん
「私の暮らしている市木は移住者も多く、家族ぐるみで一緒に子育てをできるコミュニティがあります。子どもがお昼の時間に帰ってこなくても、どこかの家で食べてるんだろうなという安心感があるし、うちにも当たり前のように息子の友達がいて一緒に食事をしたり、出かけたりもします」

アジアをはじめ、いろいろな国を旅している美夏さんですが、「こんなにいいところはない」と力強く語ります。その理由のひとつは、小学校にもあるそうです。

美夏さん
「保護者や地域の方が一丸となって、小学校を応援しているのが素晴らしいんです。サーフィン教室や柱松のお祭りもあるし、小学校発で新しく『市木ふるさと音頭』も作りました。運動会の後は、みんなで海でBBQをするのが恒例です。子ども達は夜まで浜辺で遊びまわり、大人達は周囲で語り合って。こんなに楽しい小学校はないねと、いつも息子と話しています」

塩作りや家作り、料理など、周囲には本気で仕事に取り組んでいる人たちがいて、みんなで協力して子育てができること。そして、周囲には海や川、満天の星空に虫の声と、最高の自然環境もあります。

美夏さん
「お父さんがいなくても、釣りやサーフィンなどに、仲間が連れて行ってくれます。家族が他にいないシングルマザーでも、いつもあたたかさを感じています」

-新月杉サロンカーの中。自然に包まれながら癒しの時間を過ごせます-

-今後の夢-
オリジナル精油を
もっと展開していきたい


『アメハレテ』の屋号で、幸島でセラピーをしたり、さまざまなイベントに出店したりと、エネルギッシュに活動している美夏さん。夢はまだまだ広がっていきます。

美夏さん
「ネパールで買いつけてくるオリジナルの精油の素晴らしさをもっと伝えていきたいので、ブランドとして展開したいという夢があります。あとはチベットのお香の文化は、日本人がもともと持っていた文化にも似ていて、豊かな時間が過ごせます。このお香の文化も発信していきたいので、次はお香の会を開きたいと思っています!」

-美夏さんがネパールで買いつけてくるシンギング・ボウルやお香、雑貨、精油など-



◎串間のお気に入りスポット
幸島。串間や宮崎の方ももっと訪れて、この景色に癒されてほしいと思っています。そして、この美しい場所をみんなで守っていきたいです。

◎移住を考えている方に一言
あたたかい人が多く、シングルマザーでも暮らしやすいと思います。都会にいる頃は、周囲の目が気になって窮屈さを感じていました。例えば、ご近所に迷惑がかかっているのではないかとか、他の人にどう思われているだろうかとか。市木では、周囲の方々が子育てを見守ってくれていて、自分自身も本来の姿でいられると感じています。




『アメハレテ』の屋号は、雨が上がって太陽が昇り、
大地や草花に残った雨のしずくがキラキラと輝く、
生命の美しさを感じる景色から名づけたそうです。

離婚して、天職だと思っていた仕事を諦めたこと。
それでもまた新しい夢を描いて、実現していくしなやかな強さ。

雨が上がった後は太陽とともに新しい一歩を踏み出せる、
美夏さんにぴったりの名前だと思いました。

『アメハレテ』のリラクゼーションは、
私も疲れた時のここぞという癒しとして、いつも助けてもらっています。

心を込めて、たくさんの話をしてくれてありがとうございます。
これからの活動も応援しています!


幸島前のビーチでリラクゼーションが受けられる
 新月杉サロンカー『アメハレテ』