串間市

串間市

令和6年度 施政方針

はじめに 

 私が2期目の市政運営を担ってから2年と5か月が経過いたしました。
 この間、物価高騰などによる地域経済への影響を緩和するため、様々な施策に取り組むとともに、南海トラフ巨大地震や豪雨災害などの大規模災害から市民の生命、財産を守るため、災害に強いまちづくりを進めてまいりました。
 そのような中で、咋年末、官製談合防止法違反などの容疑で副市長が逮捕・起訴されるという事案が発生し、市政に対する信頼を大きく損ねる事態となったことは痛恨の極みであります。
 二度とこのようなことがないよう、また、1日も早く市民の皆様の信頼を取り戻すことができるよう、入札
制度の検証・見直しを行うとともに、特別職を含む職員のコンプライアンス意識の強化や高い倫理観の醸成など、私自らが先頭に立ち、決意を新たに、市政運営に取り組んでまいります。
 さて、串間市は本年11月3日に市制施行70周年を迎えます。
 これまで先人達が築きあげられてきた多くの成果や取組を発展、進化させ、80年、90年、100年と、串間市がさらに歩みを進めるための重要な節目の年であります。
 これまでの歴史を振り返り、受け継がれてきた自然、伝統、文化を次世代の子どもたちにしっかりと繁ぎ、「豊かな自然と共存しみんなで創り育てる 多様性と持続性のまち」の実現に尽力してまいる所存であります。

令和6年度の市政運営の基本的な考え方

 令和6年度は、市民の生命・財産を守り、市民福祉の向上と経済回復を図るとともに、さらに深刻化する人口滅少に歯止めをかけるため、次に掲げる基本的な考え方のもと、重点施策に注力してまいります。
 1点目は「物価高騰などからの地域経済の回復」であります。

 物価高騰などにより大きな影響を受けた市民生活や地域経済の早期回復を図るとともに、本市の豊かな食や自然、魅力ある観光資源を最大限に活用し、市外から多くの人を呼び込み、交流人口や関係人口の増加を図るなど、地域経済の活性化につなげてまいります。
 2点目は「人口減少対策の取組強化」であります。
 最重要課題である人口減少対策については、結婚支援の推進や子育て支援の充実など、結婚・出産の希望をかなえる社会づくりを進めるとともに、U I Jターンを促す移住・定住支援の更なる強化や農林水産分野における就業促進に取り組むなど、人材還流を促進してまいります。
 3点目は「持続可能な魅力あるまちづくり」であります。
 今後発生が危惧される南海トラフ地震や激甚化・頻発化する風水害から市民の命と暮らしを守るため、新消防庁舎の建設に着手するほか、災害時の後方支援を円滑にする東九州自動車道の整備など、災害に強いまちづくりを進めるとともに、学校施設の老朽化対策など、子どもたちの教育環境の充実と安全性を確保してまいります。
 また、誰もが住み慣れた地域で100歳まで健康に暮らせるまちを目指すとともに、地域コミュニティの
機能維持・確保に向けた取組をより一層強化するほか、官民一体となって温室効果ガスの排出を抑制する
様々な取組を行い、ゼロカーボン社会の実現を椎進してまいります。

令和6年度予算案の概要

 令和6年度の予算編成については、第六次串間市長期総合計画で定める基本目標の実現に必要な個別施策の
推進を行うとともに、本市が抱える課題に適確に対応する優先度の高い施策の推進に取り組むこととした
ところであります。
 また、がんばっどふるさと応援基金の一部を原資とした「魅力あるまちづくり事業」を新たに創設し、
人口減少対策などの地方創生やふるさと納税の推進も寄与する事業に取り組むこととしたところであります。

 その考え方に基づいて編成した令和6年度の一般会計当初予算案は、予算総額が164億4千万円となり、
令和5年度当初予算と比較して約15.8%の増となっております。増加の主な要因としましては、ふるさと納税による寄附金額が令和5年度当初予算と比較して10億円増加したほか、消防庁舎整備事業や福島小学校長寿命化改良事業によるものであります。
 以下、この予算案に盛り込んでおります事業等について、その主なものをご説明いたします。

①市民活動・行財政分野

 まず、「市民活動・行財政分野」であります。
 地域の抱える課題が多様化・複雑化する中、住民が主体となり課題を解決する「地域連携組織」の設立を
引き続き推進するとともに、自治会の統合・再編を支援するなど、持続可能な地域コミュニティづくりに取り組んでまいります。

 また、性別や年齢にかかわりなく多様な生き方や働き方が選択でき、その個性と能力を十分に発揮できる
男女共同参画社会の実現に取り組んでまいります。
 組織体制については、地域振興施策の一体的な推進のほか、ゼロカーボンや人口減少対策の取組強化、公正な入札・契約制度の確立及びコンプライアンス意識向上など、重要施策や課題に対応できるよう見直しを行ってまいります。
 行財政改革については、第5次串間市自立推進行政改革プランに基づき、市民サービスの維持・向上を図りながら、効率的・効果的な行政運営に努めてまいります。
 そのためには、職員の生産性を向上させる必要があることから、働き方改革をより一層推し進め、ワーク・ライフ・バランスの充実に努めてまいります。
 また、人事評価制度による評価結果の有効活用など人事管理の撒底を図るとともに、各種研修の充実や人事交流を積極的に行うなど、職員の意識改革及び能力向上に継続して取り組んでまいります。

 70周年記念事業にっいては、市制施行記念式典や記念誌の発行、くしまPR大使の招へい、高齢者と子どもたちのふれあい運動会など、様々な催しを通して、市民の皆様と共に、市制施行70周年を盛り上げてまいりたいと考えております。

②保健・医療・福祉分野

 次に、「保健・医療・福祉分野」であります。

 子育て支援については、全てのこどもや若者、子育て当事者が身体的・精神的・社会的に幸せな状態で生活を送ることができる「こどもまんなか社会」を実現するため「こども計画」を策定し、ライフステージに応じた切れ目のない支援に取り組んでまいります。
 障がい者福祉については、地域で安心した生活が送れるよう相談支援体制及び各種サービス等の充実に努めるとともに、生活困窮者支援については、関係機関と連携・調整を図りながら、引き続き自立支援に取り
組んでまいります。
 高齢者福祉については、住み慣れた地域で支え合いながら、自分らしく暮らし続けられるよう地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組や高齢者団体への活動支援、社会参加や就労機会の提供、権利擁護の
推進のほか、介護人材確保及び介護現場の生産性向上に努めてまいります。
 また、人生100年時代を見据え、保健事業と介護予防事業を一体的に実施し、高齢者の生活習慣病予防や
フレイル予防対策を推進してまいります。
 市民の健康保持・増進については、市民一人ひとりが自らの健康に関心をもち、心身ともに健康でいきいきと長生きできるまちづくりを目指してまいります。
 また、疾病の早期発見・早期治療につながるよう、各種健(検)診の受診率向上を図り、健康教育や保健指導、栄養改善指導を継続するとともに、市民が楽しみながら健康づくりができるよう、本市の豊かな自然環境を活用した施策にも取り組んでまいります。
 串間市民病院については、地域における中核病院として、持続可能な地域医療の提供体制の確保や市民の
皆様に安心・安全な医療を提供していくため、令和4年12月に策定した「串間市民病院経営健全化計画」並びに令和6年3月に策定予定であります「串間市民病院経営強化プラン」に基づき、全職員が一丸となり、経営健全化に向けた各種取り組みを継続するとともに、日南串間医療圈域内の公立病院との役割・機能の最適化・連携の強化などを図ってまいります。
 また、無医地区や通院が困難な市民に対する医療の提供を継続するとともに、市木地区においては市木診療所を拠点とし、安心・安全な医療の提供に努めてまいります。

③教育・文化分野

 次に、「教育・文化分野」であります。
 学校教育については、児童生徒が豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図ることにより、児童生徒一人ひとりの学力向上を目指すとともに、教職員研修の充実を図ることで教育の質の向上を推進してまいります。

 また、串間市学校施設長寿命化計画に基づき、福島小学校の長寿命化改良事業など、学校教育施設の整備充実に取り組むとともに、学校給食については、地産地消や食育の視点に立ち、安心・安全な食の提供に努めてまいります。
 生涯学習の推進については、「いつでも・どこでも・だれでも」自由に学ぶことができるよう、市民の二ーズに配慮した学習機会の充実に努めてまいります。
 スポーツの振興については、それぞれの目的等に応じて気軽にスポーツに親しみ、ふれあうことができる
環境づくりに努めるとともに串間市民総合体育館の整備に取り組んでまいります。また、2027年宮崎国民
スポーツ大会における本市開催競技の成功に向け、引き続き関係団体と速携し、取組を進めてまいります。
 青少年の健全育成については、地域・学校・家庭が一体となった活動を推進し、青少年を守り育てる社会
環境の整備を図ってまいります。
 文化の振興については、各種の歴史文化・民俗芸能団体を支援するとともに披露や鑑賞の機会を創出し、文化財の適正な保存・活用にも努め、地域文化の振興と継承を図ってまいります。

④産業振興分野

 次に、「産業振興分野」であります。
 農業の生産振興については、物価高騰に対する支援対策をはじめ、未だ収束に至っていないサツマイモ基腐病対策など関係機関や団体と連携し、引き続き生産農家の支援強化に努めてまいります。
 農業生産基盤の整備については、地域計画の策定を進めるとともに農地中間管理事業の推進や耕作放棄地の解消と未然防止、鳥獣被害防止対策等により、優良農地の確保・保全に努めてまいります。
 また、持続可能な農業の実現に向け、需要に応じた米生産を基本に、水田における畑地化の取組を支援し、高収益作物の導入支援や定着を図るとともに、施設の導入等の取組を進めてまいります。さらに、耕畜連携の促進等による資源循環型農業を推進してまいります。
 担い手対策については、認定農業者や新規就農者等の確保・育成のほか、「新たな担い手」として企業の
農業参入を支援してまいります。
 畜産については、飼料や生産資材など価格の高止まりにより、厳しい経営状況に置かれている農家に対し、国や県などと連携した対策を講じるとともに、畜種ごとの畜産経営における生産基盤の安定化や労力軽減に努めるほか、肉用子牛の生産地として、高品質で安定的な子牛生産体制及び飼養規模の拡大等による競争力と成長性のある産地づくりを進めてまいります。
 また、家畜伝染病の発生予防及びまん延防止については、農場における飼養衛生管理基準を遵守するよう
徹底してまいります。
 林業については、持続的な成長産業化に向け林業経営後継者や新たな担い手を支援するとともに、効率的な施業を行うための森林経営計画の推進や施業集約化の促進を図ってまいります。
 さらに、木材の需要拡大に向け、木材の生産や供給体制の構築のために再造林を推進し、循環型林業や森林の多面的機能を持続的に発揮する取組を支援してまいります。
 水産業における漁船漁業については、後継者及び新規就業者が参入しやすい取組や漁業経営安定のための
取組及び持続可能な漁業経営を可能とする資源の増殖・管理の取組を支援してまいります。
 養殖漁業については、生産性の向上と雇用の礁保を図るため、作業の効率化や海外輸出の取組を支援して
まいります。
 さらに、地元水産物の販路開拓や特産化を図る取組についても、市内の飲食店等や関係団体と連携し推進してまいります。
 観光の振興については、都井岬観光交流館をはじめ、道の駅くしま、高松キャンプ公園、串間温泉いこいの里などの観光施設の整備・磨き上げにより、着実に交流人口の増加が図られております。
 高まりを見せている旅行需要を的確に捉えるため、ターゲットを絞った国内プロモーションを積極的に展開しながら、さらなる交流人口の増加に努めてまいります。
 都井岬再開発については、火まつり会場として活用している芝生交流広場及び駐車場の改修など、より魅力ある観光地として整備を進めるとともに、野生馬ガイドなど本市でしか体感できないエコツーリズムにつきましても、関係機関と連携した取り組みを鋭意進めてまいります。
 スポーツ&カルチャーランドの推進については、利用団体のニーズに即した合宿支援やスポーツ施設の
PRなど、積極的な誘致活動に努め、交流人口の増加につなげてまいります。
 商工業の振興については、事業拡大や創業支援など事業者のニーズに対応した各種事業を鋭意展開すると
ともに、原油価格や物価高騰により低迷している個人消費を喚起するため、プレミアム商品券事業等を実施
することにより、市内商工事業者の負担軽減と地域経済の活性化に努めてまいります。
 企業誘致については、人手不足など厳しい状況にありますが、若年層の人口流出抑制につながる取組でありますので、県や関係機関と連携して誘致活動に努めてまいります。

 移住定住施策の推進については、都会から地方へ、人の流れに変化が生じていることから、奨学金返還支援などU I Jターンを促す取組を強化するとともに、引き続き、移住センターにおける相談・受入態勢の充実を図るなど、移住希望者の多様なニーズに応えられるよう、多角的かつ分野横断的に取り組んでまいります。

⑤生活基盤分野

 次に、「生活基盤分野」であります。
 市道については、制度事業を活用した道路の整備を進めるとともに、橋梁の点検・捕修を実施するなど、
利便性や快適性の向上を図り、市管理の石原川については、冠水被害対策のため河川改修を行うなど、安全
安心な生活環境づくりに取り組んでまいります。
 国道及び県道については、蔵元橋の側道橋、都井地区宮原2工区道路改良の早期完成をはじめとする要望活動を積極的・継続的に行ってまいります。
 東九州自動車道については、国において事業中の「奈留~県境」間の早期整備を実現するため、事業用地
の取得などを積極的に支援してまいります。あわせて、産業・観光・防災等の各分野におけるストック効果をしっかりと国へ訴え、未事業化区間である「南郷~奈留」間の早期事業化促進に官民一体となって取り組んでまいります。
 地域公共交通については、令和6年度より「串間市地域公共交通計画」を基に、コミュニティバスやJR、
タクシーなどの既存輸送サービスを活用した利便性の高い、持続可能な公共交通ネットワークの構築を図ってまいります。
 総合運動公園については、利用者ニーズに即した施設の改修を行い、市民のスポーツ・レクリエーション、憩いの場としての利用増進に加え、スポーツ・キャンプに対応した整備を図ってまいります。
 公営住宅については、あさひが丘住宅の建替えを継続するほか、制度事業を活用した施設の整備に努め、
老朽化が著しい住宅については集約化を図るなど、適切な住宅の提供に努めてまいります。また、民間木造住宅の耐震性向上を図るため、引き続き住宅・建築物耐震改修等事業に取り組んでまいります。
 住民向けのデジタル化については、施設予約などのオンラインで対応できる行政手続きの充実を図ります。
 また、市公式L I NEにおいて、住民向け情報の配信等の様々な活用に取り組んでまいります。
 行政事務のデジタル化については、行政情報システムの標準化やガバメントクラウドヘの対応、電子契約等の導入によるペーパーレスの更なる推進に取り組んでまいります。また、オンライン学習の充実を図り、
職員が学び、新しいスキルを身に着け、自治体DXや地域をリードする人材育成を目指して取り組んでまいります。
 マイナンバー制度については、マイナンバーカードと健康保険証の一本化など、国の方針に基づく適切な対応を図りつつ、引き続きマイナンバーカードの普及促進に取り組んでまいります。
 交通安全・防犯については、6年ぶりの開催となる交通安全市民大会をはじめ、関係機関・団体と連携して住民意識の向上を図る各種イベントを開催するなど広報・啓発活動を推進し、交通事故や特殊詐欺等の被害防止に努めるとともに、消費者行政については、関係機関と連携しながら市民生活相談に適切に対応してまいります。
 防災対策については、近年、全国的に自然災害が激甚化する中、南海トラフ巨大地震も想定されておりま
す。災害に強いまちづくりを進めるため、防災行政無線システムの機能強化による住民への情報伝達手段の多重化や地域における防災対策の促進に努めてまいります。
 また、防災訓練等を通して自主防災組織の強化や関係機関・団体と連携強化を図り、防災・減災体制の充実に努めてまいります。
 消防・救急体制については、大規模な地震や風水害等に備え、消防庁舎の移転整備に取り組み、消防力の強化を図るとともに、救急出動件数が2年続けて年間900件を超えるなど、増大する救急需要に対応するため、引き続き、医療機関と連携し、迅速かつ適切な搬送を行ってまいります。

⑥環境保全分野

 次に、「環境保全分野」であります。
 地球温暖化を防止するため、事業所や市民の行動変容を促し、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス抑制の取組を行いながら、再生可能エネルギーの導入を推進するなど、ゼロカーボン社会の実現に向け取り組んでまいります。
 持続可能な社会の形成を進めるため、プラスチック類をはじめとしたリサイクルや食品ロスの削減を推進するとともに、新たに雑紙等のリサイクルに取り組むなど、ごみの減量化に努めてまいります。
 また、地域における環境保全を推進するため、市民協働によるボランティア活動等を支援してまいります。
 水道事業については、水道施設の耐震化や老朽施設の更新を進めるとともに、官民連携による技術の継承や費用の抑制を図りながら、安全で安心な水道水の安定供給と経営の健全化に努めてまいります。
 下水道事業については、地方公営企業として持続可能な事業運営に努めるとともに、公衆衛生の向上や公共用水域の水質保全を図るため、公共下水道への加入促進に取り組んでまいります。
 地籍調査事業については、土地の明確化を図るため、関係団体と連携を図りながら、早期完了を目指して
まいります。

おわりに

 以上、令和6年度の市政運営の基本的な考え方について申し上げました。
 ウクライナ問題をはじめとする国際情勢は未だ不透明であり、国内においても人口減少問題、エネルギーや原材料費等の物価高など不安定な状況が続いております。
 本市も同様の課題を抱えており、厳しい財政状況でありますが、これらの困難にしっかりと立ち向かい、
そして乗り越える、足腰の強い市政運営に努めるとともに、串間市が未来永劫発展するために、全職員の創意工夫と努力を結集し、持続可能な市政運営を実現してまいります。

 

 

令和6年度施政方針.pdf

総務課 秘書広報係