串間市

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令和7年度 施政方針

はじめに 

 令和3年10月から、第19代串間市長として2期目の市政運営を担わせていただいており、令和7年度は市長任期の最終年度となります。

 2期目を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症対策や物価高騰対策、人口減少・少子高齢化への取組を最優先に、大規模災害を見据えた防災に強いまちづくりの推進、基幹産業である農林水産業の振興、地球温暖化防止対策など様々な課題に対して、真正面から取り組んでまいりました。

 そのような中、昨年4月に東九州自動車道の未事業化区間でありました「南郷~奈留」間の新規事業化が決定したことは、長年の悲願であり、これまでご尽力いただいたすべての関係者の皆様には、あらためて心より感謝申し上げる次第であります。

 また、昨年は市制施行70周年の節目の年でありました。

 記念式典をはじめ多くの記念事業を通じて、本市の発展にご尽力いただいた先人達に心から感謝するとともに、受け継ぎ、守られてきた自然、伝統、文化の尊さを強く感じたところであります。

 令和7年度は第六次串間市長期総合計画前期基本計画の最終年度であります。これまで先人達が70年間大切に守り育ててきた「財産」を次の世代にしっかりと引き継ぎ、串間市が未来に向けて更なる飛躍・発展・進化できるよう全力を尽くしてまいります。

令和7年度の市政運営の基本的な考え方

 令和7年度の市政運営にあたりましては、人口減少の進行や物価高騰による市民生活への影響、担い手不足など、本市が直面する課題の解決や将来を見据えた未来志向の施策を展開するとともに、長期総合計画前期基本計画の最終年度であることを踏まえ、次に掲げる施策を重点的に推進してまいります。

 1点目は「子育て世代・若者に選ばれる環境づくりの推進」であります。

 子育て世代への支援の強化として、令和7年度から保育料の完全無償化に取り組みます。また、保育体験や福島高校の魅力向上などを通して、将来的な若者の移住・定住につなげるとともに、ICT教育の充実や、重層的支援体制整備をはじめとした新たな地域共生社会づくりを進めるなど、人口減少や少子高齢化を見据えた施策の推進に取り組んでまいります。

 2点目は「物価高騰等を克服するための経済・産業成長の促進」であります。

 人材確保や就労環境整備など労働力不足解消のための支援のほか、農林水産業の所得向上や地産地消・販路拡大の取組を強化し、地域産業の成長へつなげてまいります。

 また、重点対策加速化事業などカーボンニュートラルの推進、体験型観光メニューの造成や効果的な観光プロモーションを通じて、物価高騰などにより影響を受けている地域経済の早期回復を図ってまいります。

 3点目は「安全・安心な魅力あるまちづくりの推進」であります。

 老朽化した公共施設の整備・改修など公共施設マネジメントに着実に取り組むとともに、消防庁舎整備をはじめとした防災機能の充実、第81回国民スポーツ大会の受け入れ態勢の整備、書かないワンストップ窓口の導入など自治体DXの推進、福祉・介護分野における人材確保対策など、災害に強く、安全・安心な魅力あるまちづくりを推進してまいります。

 令和7年度においては、これらの取組をしっかりと行いながら、行政諸課題の解決に努めるとともに、第六次長期総合計画前期基本計画における各項目の中間目標を達成できるよう全力を尽くし、基本理念であります「豊かな 自然と共存し みんなで創り育てる 多様性と持続性のまち くしま」の実現に尽力してまいります。

令和7年度予算案の概要

 厳しい財政状況が続いておりますが、令和7年度は、市民のウェルビーイングを念頭に置いた上で、見直すべき事業を見直し、無駄を無くすとともに、優先順位の決定や財源の配分など、部門内の予算調整を行うこととしたところであります。

 また、令和6年度に続き、がんばっどふるさと応援基金の一部を原資とした「魅力あるまちづくり事業」として、人口減少対策などの地方創生やふるさと納税の推進に寄与する事業に取り組むこととしたところであります。

 令和7年度一般会計予算の規模は1673千万円 となり、令和6年度と比較して1.76%の増となっております。その主な要因としましては、消防庁舎整備事業や国民スポーツ大会関係経費、社会保障関係費の増加によるものであります。

 以下、この予算案に盛り込んでおります事業等について、その主なものをご説明いたします。

①市民活動・行財政分野

 まず、「市民活動・行財政分野」であります。

 地域の抱える課題が多様化・複雑化する中、住民が主体となり課題を解決する「地域連携組織」の設立及び活動を引き続き推進するとともに、自治会の統合・再編を支援するなど、持続可能な地域コミュニティづくりに取り組んでまいります。

 また、性別や年齢にかかわりなく多様な生き方や働き方が選択でき、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現に取り組んでまいります。

 組織体制については、市所有の財産の効率的な運用のほか、第81回国民スポーツ大会の円滑な運営を推進するなど、重要施策や課題に対応できるよう見直しを行ってまいります。

 行財政改革については、第5次串間市自立推進行政改革プラン及び実施計画書に基づく取組の実績を検証するとともに、令和8年度から取り組む新たなプラン及び実施計画書を策定し、引き続き、市民サービスの維持・向上を図りながら、効率的・効果的な行政運営に努めてまいります。

 そのためには、職員の生産性を向上させる必要があることから、働き方改革をより一層推し進め、ワーク・ライフ・バランスの充実に努めてまいります。

 また、人事評価制度による評価結果の有効活用など人事管理の徹底を図るとともに、各種研修の充実や人事交流を積極的に行うなど、職員の意識改革及び能力向上に継続して取り組んでまいります。

②保健・医療・福祉分野

 次に、「保健・医療・福祉分野」であります。

 新たな地域共生社会の実現のため、重層的支援体制整備事業を推進することにより、世代や属性を問わない相談支援体制の構築など、誰ひとり取り残さない支援体制の整備に努めてまいります。

 子育て支援については、「こどもまんなか社会」の実現に向け、保育料の完全無償化に取り組むとともに、出生前からの継続した相談支援体制を充実させることにより、安心してこどもを産み育てることのできるまちづくりに努めてまいります。

 障がい福祉については、障がい者及び障がい児が地域で安心した生活が送れるよう各種サービス等の充実に努めるとともに、生活困窮者支援については、関係機関と連携・調整を図りながら、引き続き、一人ひとりの状況に合わせた自立支援に取り組んでまいります。

 高齢者福祉については、住み慣れた地域で支え合い、自分らしく暮らし続けられるよう地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組や高齢者団体への活動支援、社会参加や就労機会の提供、権利擁護の推進のほか、介護人材確保及び介護現場の生産性向上に努めてまいります。

 また、人生100年時代を見据え、保健事業と介護予防事業を一体的に実施し、高齢者の生活習慣病予防やフレイル予防対策を推進してまいります。

 市民の健康保持・増進については、市民一人ひとりが自らの健康に関心を持ち、心身ともに健康でいきいきと長生きできるまちづくりを目指してまいります。

 また、疾病の早期発見・早期治療につながるよう、各種健(検)診の受診率向上を図り、健康教育や保健指導、栄養改善指導を継続するとともに、市民が楽しみながら健康づくりができるよう、本市の豊かな自然資源を生かした体験型メニューの造成に努めてまいります。

 串間市民病院については、地域における中核病院として、持続可能な地域医療の提供体制の確保や市民の皆様に安心・安全な医療を提供していくため、令和6年9月に新たに策定した「串間市民病院経営健全化計画」並びに令和6年3月に策定した「串間市民病院経営強化プラン」に基づき、経営健全化に向けた各種取組を継続するとともに、日南串間医療圏域内の公立病院との役割・機能の最適化・連携の強化などを図ってまいります。

 また、医療人材の確保や無医地区等の通院が困難な市民に対する医療の提供を継続するとともに、市木地区においては市木診療所を拠点とし、安心・安全な医療の提供に努めてまいります。

③教育・文化分野

 次に、「教育・文化分野」であります。

 学校教育については、中学校の1人1台端末の更新を行い、主体的・対話的で深い学びの実現を目指すとともに、地域社会が抱える課題の解決や郷土愛を育むための学習活動に生かせる環境を整備してまいります。

 また、福島小学校の校舎新築に向けた基本構想を策定し、子どもたちの学ぶ場の環境整備に取り組んでまいります。

 学校給食費における食材費の高騰対策については、引き続き、保護者の負担軽減に向けた支援を行い、安定した学校給食の運営を行ってまいります。

 生涯学習の推進については、「いつでも・どこでも・だれでも」自由に学ぶことができるよう、市民のニーズに配慮した学習機会の充実に努めてまいります。

 スポーツの振興については、それぞれの目的等に応じて気軽にスポーツに親しみ、ふれあうことができる環境づくりに努めてまいります。

 また、2027年開催の第81回国民スポーツ大会が正式決定されました。本市開催競技の成功に向け、引き続き、関係団体と連携し、取組を進めてまいります。

 青少年の健全育成については、地域・学校・家庭が一体となった活動を推進し、青少年を守り育てる社会環境の整備を図ってまいります。

 文化の振興については、各種の歴史文化・民俗芸能団体を支援するとともに、披露や鑑賞の機会を創出し、旧吉松家住宅を含む文化財の適正な保存・活用にも努め、地域文化の振興と継承を図ってまいります。

④産業振興分野

 次に、「産業振興分野」であります。

 農業の生産振興については、物価高騰に対する支援対策をはじめ、未だ収束に至っていないサツマイモ基腐病対策など関係機関や団体と連携し、引き続き、生産農家の支援強化に努めてまいります。

 農業生産基盤の整備については、地域計画の実現に向けた取組を進めるとともに、農地中間管理事業の推進や耕作放棄地の活用、鳥獣被害防止対策等により、優良農地の確保・保全に努めてまいります。

 また、持続可能な農業の実現に向け、需要に応じた生産を基本とした高収益作物の導入支援を図るとともに、施設の導入支援、更には耕畜連携による資源循環型農業を推進してまいります。

 担い手対策については、認定農業者や新規就農者等の確保・育成のほか、「新たな担い手」として企業の農業参入を支援してまいります。

 畜産については、繁殖農家の経営が危機的状況にあることから、高品質で安定的な子牛生産地としての基盤強化及び飼養規模の維持につながる取組を支援するとともに、畜種ごとの経営の安定化や労働力の軽減に努めてまいります。

 また、家畜伝染病の発生予防及びまん延防止については、これまで以上に関係機関・団体が一体となった防疫体制を構築するとともに、農場における飼養衛生管理基準を遵守するよう徹底してまいります。

 林業については、持続的な成長産業化に向け林業経営後継者や新たな担い手を支援するとともに、効率的な施業を行うための森林経営計画の推進や施業集約化の促進を図ってまいります。

 さらに、木材の需要拡大に向け、木材の生産や供給体制の構築のために再造林を推進し、循環型林業や森林の多面的機能を持続的に発揮する取組を支援してまいります。

 水産業における漁船漁業については、後継者及び新規就業者が参入しやすい取組や漁業経営安定のための取組を推進するとともに、イセエビの漁場整備など持続可能な漁業経営を可能とする資源の増殖・管理の取組を支援してまいります。

 養殖漁業については、生産性の向上と雇用の確保を図るため、作業の効率化や海外輸出の取組を支援してまいります。

 さらに、地元水産物のインターネット販売の取組を支援するなど、販路開拓の取組や特産化を図る取組についても、市内の漁業者や飲食店、関係団体等と連携しながら、推進してまいります。

 商工業の振興については、創業支援や事業継続支援など、市内事業者の多様なニーズに対応できる各種事業を展開するとともに、県や関係機関と連携した企業誘致活動を積極的に取り組むことで、新たな就業の場の確保及び若年層の人口流出抑制につなげ、地域経済活性化に努めてまいります。

 観光の振興については、都井岬観光交流館をはじめ、道の駅くしま、串間温泉いこいの里、高松キャンプ公園など観光施設を活用したプロモーションを積極的に展開することで交流人口の増加に取り組むとともに、本市の人材・資源を活用したエコツーリズムについてもメニューの充実を図ることで、滞在型観光の促進に努めてまいります。

 また、交流人口の増加につながる各種合宿誘致及び支援についても、関係機関・議会と連携を密に図りながら積極的な誘致活動に努めてまいります。

 移住定住施策の推進については、移住希望者の多様なニーズに応えられるよう住宅改修費用等の支援や移住センターにおける相談・受け入れ態勢の充実を図るとともに、UIJターンを促すための奨学金返還支援や保育体験事業に継続して取り組むほか、福島高等学校の新たな入学者確保対策として全国枠入試の調査・検討を行ってまいります。

⑤生活基盤分野

 次に、「生活基盤分野」であります。

 市道については、制度事業を活用した道路の整備を進めるとともに、橋梁の点検・補修を実施するなど、利便性や快適性の向上を図り、市管理の石原川については、冠水被害対策のため河川改修を行うなど、安全安心な生活環境づくりに取り組んでまいります。

 国道及び県道については、都井地区宮原2工区道路改良、県道市木串間線(牧内工区)の早期完成をはじめとする要望活動を積極的・継続的に行ってまいります。

 東九州自動車道については、産業・観光・防災等の各分野におけるストック効果をしっかりと国へ訴え、一日も早い全線開通に向けて官民一体となって取り組んでまいります。あわせて、事業中区間である「南郷~奈留」間及び「奈留~夏井」間の整備促進を図るため、事業用地の取得など積極的に支援してまいります。

 地域公共交通については、「串間市地域公共交通計画」に基づく施策を推進し、既存輸送サービスの利便性の向上や持続可能な公共交通ネットワークの構築を図ってまいります。

 総合運動公園については、利用者ニーズに即した施設の改修を行い、市民のスポーツ・レクリエーション、憩いの場としての利用増進に加え、スポーツ・キャンプに対応した整備を図ってまいります。

 公営住宅については、老朽化が著しい住宅からの住み替えなど集約化を図るとともに、適切な住宅の提供に努めてまいります。また、民間木造住宅の耐震性向上を図るため、引き続き、住宅・建築物耐震改修等事業に取り組んでまいります。

 住民向けのデジタル化については、書かないワンストップ窓口の導入による利便性の向上やオンラインで対応できる行政手続の充実を図ってまいります。

 行政事務のデジタル化については、行政情報システムの標準化やガバメントクラウドへの対応、ペーパーレスの更なる推進に取り組んでまいります。

 また、オンライン学習の充実を図り、職員が学び、新しいスキルを身に付け、自治体DXや地域をリードする人材育成を目指して取り組んでまいります。

 交通安全・防犯については、関係機関・団体と連携して住民意識の向上を図る各種イベントを開催するなど広報・啓発活動を推進し、交通事故や特殊詐欺等の被害防止に努め、消費者行政については、関係機関と連携しながら市民生活相談に適切に対応してまいります。

 防災対策については、全国各地で自然災害が激甚化する中、近年、日向灘を震源とする地震が頻発している状況にあり、今後、南海トラフ巨大地震も想定されております。災害に強いまちづくりを進めるため、防災行政無線システムの機能強化による住民への情報伝達手段の多重化や地域における防災対策の促進に努めてまいります。

 また、防災訓練等を通して防災意識の高揚を図り、自主防災組織の強化や関係機関・団体と連携を強固にし、防災・減災体制の充実に努めてまいります。

 消防・救急体制については、大規模化する災害及び救急需要の増加に対応するため、消防庁舎の整備や消防力の充実を図るとともに、関係機関との連携を強化し、市民の安全・安心な暮らしの確保に取り組んでまいります。

⑥環境保全分野

 次に、「環境保全分野」であります。 

カーボンニュートラルを達成するため、昨年環境省より採択された重点対策加速化事業を基軸に再エネや省エネの取組を推進するとともに、市民の行動変容を促し、ゼロカーボン社会の実現に向けた取組を加速させてまいります。

 持続可能な社会の形成を進めるため、プラスチック類をはじめとしたリサイクルや食品ロスの削減を推進するとともに、新たに雑紙等のリサイクルに取り組むなど、ごみの減量化に努めてまいります。

 また、地域における環境保全を推進するため、市民協働によるボランティア活動等を支援してまいります。

 水道事業については、基幹水道施設の耐震化として、令和7年度より都井配水池の耐震化に取り組んでまいります。また、引き続き、漏水箇所の早期発見や老朽施設の更新による有収率の向上に努めるとともに、官民連携による技術の継承や費用の抑制を図りながら、安全で安心な水道水の安定供給と経営の健全化に努めてまいります。

 下水道事業については、地方公営企業として持続可能な事業運営に努めるとともに、公衆衛生の向上や公共用水域の水質保全を図るため、公共下水道等への加入促進に取り組んでまいります。

 地籍調査事業については、土地の明確化を図るため、関係団体と連携を図りながら、早期完了を目指してまいります。

おわりに

 以上、令和7年度の市政運営の基本的な考え方について申し上げました。

 「どうしてもこうでなければならない、こうしたいという、強い意志が経営者には必要なのである。」

 これは、経営者として尊敬する京セラ株式会社の創業者、故・稲盛和夫さんの言葉であります。

 私は、この言葉を常に心に持ち続け、串間市政の更なる発展のため、全身全霊で取り組んでまいりました。

 任期最終年度である令和7年度も「団結」「継続」「変革」の政治信念のもと、職員と一丸となり、全力を傾注する所存でありますので、議員各位、そして市民の皆様には更なるご理解とお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 令和7年度施政方針.pdf

総務課 秘書広報係