親から子へ
つながる農業への想い

農家 原田俊一さん

まだ太陽も昇らない、辺りがうす暗い早朝4 時。畑の奥に見える山々の間には、うっすらと靄に包まれた幻想的な景色が広がっています。オクラ畑ではヘッドライトの光を頼りに、オクラの長さや大きさを見極めながら、丁寧に収穫を行っています。今回訪れたのは、宮崎県串間市の南東部に位置する海や山に恵まれた大自然豊かな「市木」です。オクラやゴボウ、米作りを行い、息子と共に家族で力を合わせ、家業を守り続けている原田俊一さんにお話を伺いました。

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農家 原田俊一さん

農家の長男として生まれ、高校卒業後は建設業で働きながら、両親が営んでいる農業の手伝いをしていました。しかし、両親の手伝いをしていくうちに、土地や機械だけ継承しても仕方がないと思い、やはり長男である自分が農業の道を歩み、技術や知識、経験を受け継ぎながら地域の人たちとともに生きていこうと、決心しました。現在は、オクラとゴボウ、米作りを行っています。各作物の農作業が重複する時期は負担が大きくて大変です。この間の繁忙期には、地域おこし協力隊の二人が手伝ってくれたので、とても助かりました。

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次世代へのバトンと
新たな楽しみ

自分で作った作物で直接的に対価を得られることが、農業に対するモチベーションにつながるはずなのですが、最近は設備投資にしても、資材にしても、価格が高騰しています。その反面、作物そのものの価格が低下しているので、農業経営を取り巻く環境はとても厳しく、現状維持をするのが精一杯というのが正直なところです。しかし、そんな中でもありがたいことに息子が農作業を一緒に頑張ってくれています。時には息子と衝突することもありますが、後を継いでくれるという気持ちが自分の支えとなり、親としてもっと頑張ろうと思えました。そろそろ世代交代も見据えて考えていかなければならない年齢にもなったので、後は徐々に経営を任せ、サポートにまわりたいと思っています。自分の代で終わりでないことがとても嬉しく、今後の楽しみのひとつになりました。

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ものづくりへのこだわり

オクラの栽培は、植え付けから収穫、出荷まで、ほとんどが手作業です。収穫時期を逃すと実が筋張って固くなるため、早朝からひとつひとつ丁寧に、手作業でサイズを選別しながら収穫し、オクラをネット詰めした後、すぐに農協へ出荷します。生産者が責任をもってオクラを作った証として、パッケージに貼るラベルには、生産者の名前を記載しています。品質管理は、生産者全員が一丸となって取り組みを行っており、その品質管理は、単にオクラの品質だけでなく、生産者の質、仕事のやり方の質、機械や資材の質も管理し、環境も考えていくものでなければいけません。オクラの栽培に欠かせない畑を覆うマルチのシートを、土中にすき込むことで微生物により分解される生分解性マルチに変更しました。以前使用していた分解しないマルチに比べ、オクラ栽培の作業効率と産業廃棄物処理の費用面、環境面での負担も軽減しました。今後更に作業効率化が図れるように、ゴボウなどのその他の作物に適合する生分解性マルチが普及してくれることを期待しています。

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持続可能な地域農業の実現

スマート農業の導入による、作業効率の向上、人材不足の解決、作物の収量の増加や高品質化などの実現は、夢のような話です。市木では、農作業が全て手作業で、なおかつ高齢化が進んでいるため、経営も農地も現状を維持するだけで手がいっぱいです。立地条件的に市木はとても厳しい地域だと理解しています。この地域でスマート農業の力を十分に発揮させるために、担い手への農地利用の集積・集約化、作付けの団地化、圃場整備や水路整備などの基盤整備が行われ、環境や体制が整い、実現してくれたらいいなと思います。

本気で農業をやる気があれば
本気でお手伝いします

串間は、大自然に囲まれ、人と人とのつながりを強く感じることができる、人情味あふれる温かな町です。農業は、農家の跡継ぎでもなく、土地もないサラリーマンでも、やる気さえあれば、道は開けます。耕作放棄地の増加は、鳥獣被害の拡大や荒廃農地の増加など、周りの環境に様々な悪影響を及ぼす恐れがあるので、耕作放棄地を再生して地域を元気にしてくれるような、そして資源である農地を守り、次世代に残してくれる、やる気と頑張りのある人をお待ちしております。

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くしま農家メシ オクラ料理

原田さんのオクラは手で折ると「パキッ!」と音が鳴り、食べると甘みもあり、驚くほどの弾力感で食べ応えも抜群です。毎日食べても飽きない原田家のオクラ料理をご紹介します。食欲のない時、疲労回復したい時は、オクラを料理に入れるだけで栄養満点になる万能野菜です。市木オクラはどんな料理にもよく合うので、軽く湯がいたオクラをカンタン酢に浸すだけの、とっても簡単にできる「オクラの浅漬け」や、しゃぶしゃぶ肉でオクラを巻いて焼く「オクラの肉巻き甘醤油焼き」、相性抜群なオクラと納豆を刻み、できたてのごはんにかけて食べる「ネバネバ丼」、子供も、大人も大好き「オクラ入りお好み焼き」、オクラの彩りがアクセント「オクラカレー」がおすすめです。