向上心を持ってピーマン栽培に
情熱を注ぐ農業男子

地域おこし協力隊 甲斐道仁さん

2022年6月末、宮崎県立農業大学校の「みやざき農業実践塾」で約1年間の研修を終え、地域おこし協力隊の甲斐道仁さんが新たな農業の担い手として、第一歩を歩み始めました。「みやざき農業実践塾」での生産実績や、試行錯誤しながらピーマンと向き合った研修、今後の意気込みなどを伺いました。

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志高くピーマンと向き合った1年

「みやざき農業実践塾」の研修では4aのハウスを受け持ち、231日の収穫期間で、6トン越えの出荷をしました。10a換算にすると、過去の実践塾生の実績12.16トン、県指針12トンに対し、実績15トンという成績を残し、無事に卒塾することができました。

研修中にピーマンの生育管理で特に徹底したのは、樹の状態を把握することです。生長点の動き方や状態、葉の形状や柔らかさ、厚み、葉の垂れ方、節間の長さなど。朝・夕方に観察して作業中も出来るだけ全体に目を配り、樹の状態を把握して何が不足しているのか、どうしたらより良くなるのかを、分からないながらも考え続けました。

そして、収量を上げるために意識していたことは、3つあります。
1つ目は、樹の着果負担をかけないように果収穫できるサイズで細かく、出来るだけ毎日収穫すること。緊急性の高い仕事でなければ自分の中の収穫の優先順位を管理作業や防除よりも高い位置に置いて、当日と先々の仕事の流れを考えて構成して取り組みました。
2つ目は、様々な要因の結果で単一の成果でないので何ともですが、病害虫を一定量で抑えるためにIPM(総合的病害虫・雑草管理)の考えを元にして、天敵製剤(スワルスキーカブリダニ、タイリクヒメハナカメムシ等)や微生物殺菌剤を導入し、病害虫の害で樹が弱らないように気をつけ、早朝換気も行っていました。 3つ目は、見えないのでとても難しかったのですが、根の状態や根域を如何に広げ、強くするかを意識して日々の潅水や施肥に取り組みました。根が強くなければ病害虫にも負けてしまうし、なり疲れして収穫の山谷が出来てしまい、収穫量と作業性に影響してしまうので、意識しながら取り組んでいました。

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みんなの「おいしい」が励みに

常に1ヶ月後の樹姿をイメージして、管理をするように意識していました。前半は具体的なイメージを持って、イメージに近い樹姿に持って行けていたと思いますが、後半になり枝葉・花数が多くなってくるとどういう管理をして、どんな樹姿になるのかが分からなくなりました。
経験値不足の部分なので逆にあまり整枝管理は入れずに、枝葉がどう動くかを見て考えることにしたのですが、4月後半以降になると枝の数が多くなり過ぎて一人での管理・収穫作業は、本当に苦労しました。
しかし、自分が作った作物が「おいしかった」と言ってもらえるのは嬉しいです。ピーマン嫌いの子供が自分の作ったピーマンは「おいしい」と言って、バクバク食べてくれたと聞いたときは、涙が出そうなくらいに嬉しかったです。

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実践塾の仲間は「一生の宝物」

「みやざき農業実践塾」では、同じ志を持つ12名の同期と一緒に過ごしました。一人で一つのハウスを管理しているので作業時間はそれぞれですが、仕事前や共同選果場などでは、農業会話で花が咲き、仲が深まっていきました。今年はピーマンを作っていたのは自分だけで、おおよその人達はきゅうりだったので作物は違いましたが、作物が違うからどんなことをしているのか、今何をしているのか、どんな状況なのか、常に情報収集をしていました。
最初は就農地も違うし別にって思っていたのですが、1年も一緒にいると自然に仲間意識が高まって気づいたら同志という感覚になっていました。
だからこそそれぞれ就農地も就農条件もバラバラですが、今後みんな思い描く成功を手にして欲しいと思っています。

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経験値の蓄積と収量確保を目指して

実践塾では4aでの栽培でしたが、就農しての来作はその5倍の面積で栽培することになります。自分にとってはとても難しい事なのですが如何に要所を抑えて、時間効率を上げるかが重要になってきます。面積も大きくなれば温度ムラや病害虫の要因も複雑に絡み合ってくるので、今作の経験がそのまま通用することは無いと思っています。
就農1作目となる来作の目標は、地域標準の収量を上げること、生活が成り立つ営農経営をおこなうこと、取り返しのつかない問題にならないように小さな問題点での発見・改善を試みて、次作にその経験値を活かすことです。